遺伝子の役割の解明
寿命を決定する遺伝子は3種類あり、この寿命遺伝子が生命の長さを決めています。
(1) 常染色体の上にある寿命遺伝子(常染色体性寿命遺伝子、A1とA2)
(2) X染色体の上にある寿命遺伝子(X染色体性寿命遺伝子、X1とX2)
(3) 核外寿命遺伝子 (ミトコンドリア寿命遺伝子、E1 と E2)
この3種類の遺伝子の様々な組み合わせと寿命の関係を調べた結果、下記のようなことが判りました。
(1) A1とA2
これらの寿命遺伝子は寿命の長さのベース(下図のオレンジ色で示されている基本寿命)を決める遺伝子です。これらの遺伝子は両親から1個ずつ遺伝されるので個体はA1A1、A2A2、A1A2のように2個ずつの組になった形で持っています。A1しか持たない個体
(A1A1)は短命で、A2だけを持っている個体 (A2A2)は長命になります。また、A1とA2の両方を持っている場合
(A1A2)はA2が優性なので長命になります。しかもこの場合、A1A2には雑種強勢が起こってA2A2よりも更に長命になります。
(2) X1とX2
これらの寿命遺伝子は基本寿命 (A1A1, A2A2, A1A2)に付随して寿命を更に延ばす役割があります(下図の緑色で示されている部分。淡い緑色はX1の作用、濃い緑色はX2の作用)。X1やX2はX染色体上にあります。X染色体はY染色体と協力して性別を決定する役割があり、XYは雄
(♂)、XXは雌 (♀)となります。雄はX染色体を1個、雌は2個持っていることが寿命に性差ができる原因です。
X1はA1A1に付随すると寿命を5日間延ばし、A2 (A2A2, A1A2)に付随すると7日間延ばすことが判りました。雌はX1が2個あるので1個しか持たない雄より長命になります(寿命の性差)。
X2はX1の3倍の延命力があり、A1A1に付随すると寿命を15日間延ばし、A2 (A2A2, A1A2)に付随すると21日間延ばします。X2は1個(雄)でも2個(雌)でも延命量は同じで性差は起こりません。
X1やX2が脱落したX染色体も出現します。染色体上の1部の遺伝子の脱落を欠失と言います。この場合X1、X2の効果が受けられず基本寿命だけ
(A1A1, A2A2, A1A2)になります。
(3) E1とE2
これらの核外寿命遺伝子は細胞質中のミトコンドリア内にあります。精子のミトコンドリアは受精時に排除されるため、これらの遺伝子は父親からは遺伝されませんが、卵子にもともとあったミトコンドリアつまり母親の核外寿命遺伝子だけが子に受け継がれます。
E2と呼ばれる核外寿命遺伝子は本来A1やA2が決定する寿命遺伝子の形質(寿命の長さ)を邪魔して、全て短命にしてしまう特質を持っています。E1はそのような性質を持ち合わせていないため、A1・A2、X1・X2が決めた寿命の長さがそのまま個体の寿命として反映されます。
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